掛物は、中国・朝鮮半島から日本へ伝わってきて、その上で完成したといってもいいと思います。
それらの国では、本紙そのものを見せる、保存する表装が主で、日本の表装のように、鑑賞するものは極めて少ないのです。
内容にふさわしい、鑑賞に価するようにお金を掛けたり、デザインを考えた、珠光・利休・遠州らの美意識を見逃すわけにはいきません。
掛物としてひとり歩きできるかたちになったのは、室町の書院文化。茶の湯文化が大きく影響していると思います。
花や書画が飾られた床の間や違棚、付書院を備えた畳敷の部屋、すなわち「座敷」という、典型的な和風の生活空間は、室町時代後期に成立します。
日本住宅史上において、中世が画期とされるのは、特定の機能をもつ室空間がはじめて独立をし、さらには建築として独立した点と伝えられ、
その機能とは集会、あるいは接客という事であり、武家を中心とした社会における社交の場として成立する会所に典型を見出すといわれております。